生れては消ゆ線路の軋み花の雨
滑りゆく列車を追ふて花追ふて
額づけば花の舞ひ散る社かな
ゆだねたる春爛漫の助手席に
帰り道それぞれにある朧かな
春愁の髪にあまねし指の先
開花宣言街角の色めきて
病室の歌声清かフリージア
春愁のパンドラの箱開きさう
潮の香にマストの揺れて風光る
春泥をつけし青菜や無人店
振り返りふりかへりつつ春の雨
舵音の朧にひびく船溜まり
うららかや母に寄り添ふ磯伝ひ
木蓮や明日は母を迎ふる日
もくれんやあしたはははをむかうるひ
(明日は出掛けますので、お休みします)
眦の濡れて仔牛の春の夢
春の鴨陽を留めたるひとところ
春雨の師を偲ぶがに降りやまず
母に似し姉のしぐさや花辛夷
葬列の続く岬や花菜風
君が手を泳がせてゐる春の水
のどけしやひねもすきみのそばにゐて
木洩れ日も囀りもうたた寝の中
薄紙にくるむ日差しや雛納め
春愁の風のまにまにハーモニカ
あたたかや掌に分けてやる金平糖
待ち合はす渋谷に仰ぐ春の雲
のどけしや膝の句帳は閉じしまま
雛の灯の揺らぎに頬の染まりゆく 乙女座 雛の姫目を伏せて居る薄明かり よし
抽斗に父の絵筆や白椿
逢ふてきし袂に梅の匂ひけり
おうてきしたもとにうめのにおいけり