2007年08月31日

2合酒

夕凪ぎて
えっと弾けし
鳳仙花

良き酒の
充(あては)良き友
秋の雨

何なくも
2合の酒に
虫の声

憎しみを
持て余しつつ
秋立ちぬ

通勤の
果てまで来よと
雲誘ふ

通い路の
倣いと数う
秋烏

2007年08月30日

かまきり

「 蟷 螂 」

蟷螂は 世の中すべて 気に入らず

秋桜 昨日の恥に 揺れており

残菊の 毀れて今日を 染めにけり

遠い日の 祖母の笑顔や柿簾

帰り来ぬ 記憶に添うる 萩 薄

蟷螂の 振り返る先に 海は暮れ

2007年08月29日

鶏頭のお終い

「 黒 猫~2 」

銀杏果て にわかに広き 空となる

柿落ち葉 紅(べに)殊更に 千歳橋

もみじ葉を 燃やし尽くして 日は落ちぬ

何となく 朱き花欲し クリスマス

風花は 残照と我慢 比べおり

隣人は 皆帰郷せる 雪しきり

2007年08月29日

黒 猫

「 黒 猫 」

千代紙を 折りつ解きつの 冬茜

黒猫の てしてしとゆく 息白し

色帯びて 街は冬日と なりいたる

炬燵位置 去年と変えて 嘆息す

山陰に 羽ばたく如き 山茶花や

懐かしき 夜神楽の笛 出でにけり

2007年08月29日

ふるさと

「 句集~ふるさと 」 より

焼き芋の 白きトラック 寒々し

我が心 霜夜の犬に 真似て鳴け

凍て蜂の やや動きたる 雲厚き

啄木のごと 腹ばいぬ 冬の浜

君もまた 寂しき身なる お茶の花

蜜柑剥く 我が手のシミの 哀しかり

駅頭の 花も背を押す 小夜時雨

きっぱりと いちょうは空を 留めており

故郷の 切干を煮る 寂しかり

2007年08月28日

月の宿~2

「 月の宿 」

 叫べども 時は帰らず 残り蜂

 信楽に 一挿し眼に美味 山葡萄

 自然薯を 掘りたる父の 四十忌 

 滝つぼに 落とさんとする 通草(あけび)かな

 眼を洗い 身体一つの 秋暮れる

 縺れ合い 蔓引けば嫌がる 烏瓜

 狂うほど 愛したる日の 実もあらず

2007年08月28日

虫の褥

 「 皆既月蝕 」

 誰も皆 似非の褥か 虫の声

 皆既蝕 月は身しらず 染まりけん

 飲ん兵衛の 絵に騙されて 新酒かな

 愛おしき 日を祈れまい 星流る

 もはやもう 案山子と呼べぬの 畦を行く

 朝顔は 役目果たして 日々眠る

 

2007年08月28日

隠れんぼは 鬼のまま

 「 かくれんぼ 」

山の駅 めじろ蜜柑の 眩しけり

 秋蛍 地蔵の肩に 隠れけり

そのかみの 母の夜話 夢温し

 麦踏みし 母の背淡く なりにける

病みし娘の 南の窓に 柚子一つ

 鳳仙花 四方に飛びて 鬼独り

2007年08月27日

古団扇

 「 古団扇 」

 愛しても 恨みてもただ 春の風

 春暁を 跨ぎて骨に 近づかむ

 麦踏みし 母の背淡く なりにける

 一日を 無駄なく重ね 蝶生まる

 無一物 ついて来たるか 古団扇

2007年08月26日

ああ竜胆の花咲けど

「 ああ竜胆の花咲けど 」

眠り越し あら口惜しき 今日の月

桔梗(きちこう) の 風に勝れる 悔いは無し

思念など 振り捨ててよと 花ススキ

弦月よ 何故我のみを 置いてゆく

亡き人を 思い出でよと 赤蜻蛉

 

2007年08月26日

猫だらけ

「なーよ~」
- 猫だらけ -

土用雨
捨てられし猫の
毛の光り

坂道の
地蔵の前の
黒き猫

朝顔の
弦に子猫は
戯れぬ

桐一葉
余熱に 猫は
顔拭う

野良猫に
美しき日の
野萩あり

野良猫に
棲家追われし
赤とんぼ

2007年08月26日

胸のすきま


~ この罰当たり、どこに捨てとんじゃー! ~

「 胸のすきま 」

 
鈴虫の 目覚めし宵に 細き雨

音絶えて 雲の向こうの 後の月

故郷は 胸の隙間で 百舌の晴れ

露の玉 こぼしてさらに 空を見ん

風寂し 身の定まらぬ 蓑虫よ 

蟷螂は 世の中すべて 気に入らず

2007年08月26日

匂い鳥

「 匂い鳥 」

桐の花  残して雨は 去りにけり

憂いつつ 今鳴かむとす 匂い鳥

麦秋と 思えばあれも 許すべき

もしかして 切れば血の出る 落ち椿

弔いの 兄の包帯 安居なり

ぜんまいを 祖母と摘みし日の 風が吹く

山女釣る 尾鈴の麓 旅半ば

春の田の 畦未だ柔らかし 靴を脱ぐ

夏草の 雨の雫や 虹が家

連翹の 賑わいほどに ときめかず

紫の 風鈴草より 至る風

2007年08月25日

月の宿

 「 月の宿 」

 酔いたれば 独りに広き 月の宿

 鳩笛の 谷落ちてゆく 鄙の里

 蛇笏忌に 透き通りたる 雨しきり

 椿の実 思わず蹴りて 空仰ぐ

 人を憎み 晩酌さみし 苦うるか

2007年08月24日

生きてこそ~3

 「 生きてこそ 」

 きっぱりと 雲を映して 青き梅

 悪ガキの あをき唇 桑実る

 杜若 虫誘うごと 首を垂れ

 まいまいの 行き着かぬ間に 雨上がる

 梅雨走る 病みし娘は 靴の欲し

 

2007年08月24日

鳥飼う少年

 「 鳥飼う少年 」

 末枯れの 小道は空に 突き抜ける

 百舌呼べり 架線の更に 高きにて

 まだ さらに不幸のあるか 稲光

 メジロ飼う 少年の夢 朝淋し

 繰り返す 虚しさのみの 秋入日

 亡き母と 大根引きし日の 風匂う

 飛翔する 夢の続きや 冬の蝶

2007年08月24日

秋 燈

 「 秋 燈 」

 逝く波よ また去る波よ 秋の浜
  
 路地抜けて やや傾ける 秋の海

 空の色 映して竜胆 丈低し

 労わりの 虚しく響く 今年酒

 日展を しかめっ面して 観るベレー
 
 秋薊 夕日送りて 影揺るる

 茶の花を 目に折り帰り 二合酒 

2007年08月23日

生きてこそ~2

 「 生きてこそ 」

 すがる虫 守るがごとく 闇の猫

 山の駅 めじろ蜜柑の 眩しけり

 秋蛍 地蔵の肩に 隠れけり

 提灯に 小糠の雨や 花冷ゆる

 ああこの風 善き頃の風 迷いこむ

 信念の あまたの墓標 花しきり

 父の年 十年を越えし 飛花に立つ

2007年08月23日

残 菊

 「 残 菊 」

 残菊の 毀れて今日を 染めにけり

 遠い日の 祖母の笑顔や柿簾

 帰り来ぬ 記憶に添うる 萩 薄

 蟷螂の 振り返る先に 海は暮れ

 柚子味噌の 壜振りたれば 窓に月

 昇り道 振り返らずの 秋遍路

 群集の 善人と見ゆ 花会式

2007年08月23日

壊れた家族

「雁 行」

懐かしき 家族は 絶えぬ 雁の棹

障子貼る 桟越しに鳴く 黒き犬

刈田ゆく 風を背負いて 家路かな

人はみな 時に運ばる いのこづち

かなかなは 行く雲追うて 叫びたる

古伊万里の 銚子を寝せて 秋の雨

老いてなお 胸の虚空に 緋連雀

新走り 一口舐めて 燗とせむ 

あかまんま やれ三日目の 雨かかる

うたた寝の 里遠くして  こぼれ萩

2007年08月22日

残照式部

 「残照式部」

 コスモスを 家族と見し日 帰り来ず

 月白の 影を背負いて 鳥走る

 菜種蒔く 農夫の憂い 空焼ける

 鈴虫の 目覚めし宵に 細き雨

 音絶えて 雲の向こうの 後の月

2007年08月22日

生きてこそ

 「生きてこそ」

 落ち口に 契りをほどく 花筏

 ちさき手に 御しかねている 風車

 ばりばりと レタス食いたき 春の雷

 哀れ白く 月と戯る 花水木

 夕虹や 人責める国に 成り果てぬ

2007年08月22日

寄る辺無き宵

 「寄る辺無き宵」

 満月の 去りて雲間は 冷えにけり
 
 酔いどれて 案山子と雨を 相伴す

 この年も 花を探して 枯野なる

 秋果てて し残しばかり 爪を切る

 茄子の馬 夢の父母 うら若き

2007年08月21日

泡と枝豆~3

 「泡と枝豆」

 風去りて 蒼空に染む 白き鳥

 栗飯を 混ぜて久しき 人を想う

 唐辛子 腹無きと孔子 装いぬ

 肩垣根 紫式部 背を向けぬ

 路地ごとに 喋りていたる 夕化粧

2007年08月21日

狂った赤い実~2

「狂った赤い実」

潔癖に 秋刀魚は光り 右向けり

陽を追うて 取り残される 彼岸花

持ちきれぬ 煩悩燃ゆる 曼珠沙華

猫はただ 愁思とばかり 眼を返す

痩せ犬は 哀しい月を 吠えもせず

2007年08月21日

行方なき風~3

 「行方なき風」

 紅蓮の 待ち焦がれたる 驟雨かな

 風なくて 風鈴を手で 振ってみる

 桑の実に 歯を染めて家路 夕鴉

 アセチレン 朝顔市の 影深し

 唖蝉は 僅かな空に 憧れぬ

2007年08月20日

母に詫びる

 「母に詫びる」

 老い猫は 上目使いの 日向ぼこ

 蟷螂よ 枯れて温いか 雲低し

 独り身に 哀しく舞える 雪女

 慣れぬ児の  直方体の 雪まろげ

 一椀の 飯に代われよ 里の雪

 鰯差す 古き家の翁 顔上げず

 青幟 人疎らなる 初不動

 かくのごと 水仙を見き 友逝きて
 
 母にただ 詫びるのみかな 秋の雨

2007年08月20日

狂った赤い実

「狂った赤い実」

落日や まだ実の固き 鳳仙花

仮寝宿 ほとほと暮れる 夕化粧

捨て鉢に ちさき一輪 牽牛花

七草の 皮膚に届かぬ 街暮らし

赤蜻蛉 大いなる日を 追う如し

2007年08月20日

泡と枝豆~2

「泡と枝豆」

 口惜しき けふは終わりぬ 水を打つ

 繋ぎし手 夢に哀しや 矢研滝

 落ちたるを 弔う経か 蝉時雨
 
 徒に 回り道して 残り菊

 鳳仙花 マチエの庭の 鬼ごっこ

 ひたすらに 人憎みても 盆の風

 幸せを 彼にもそれにも 星流る

2007年08月20日

山葡萄

 「山葡萄」

 落日よ 褥に逝けと 黄落し

 崖際に 獣誘うや 山葡萄

 黄落の 影より風は 立ち上がる

 山茶花や 昼の街灯 消えずして

 悔いあれど 戻れぬ夢や 小春日ぞ

2007年08月20日

切り絵の柚子~1

 「切り絵の柚子」

 いのこづち 今日を限りと 旅をせむ

 血を喰らい 夢のあぜ道 曼珠沙華

 親無きに 案山子懐かし 父の帽

 嘘つきて すずめ蛤 舌寒し

 松手入れ 職人の足袋 潔ぎ良く

2007年08月19日

泡と枝豆~1

 「泡と枝豆」

 風に破(や)れ 里に未練か 蜘蛛の糸

 風鈴を 買いて新たな 風を待つ

 枝豆を茹で 栓抜きて泡 友を待つ

 古の 蝉鳴くごとし 大手門

 口惜しき けふは終わりぬ 水を打つ

2007年08月19日

行方なき風~1

 「行方なき風」

 切なくて たまらず麦の 穂を千切る

 遠い日の 母の白き手 祭り笛

 糊効きし 浴衣は嫌と 駄々をこね

 あめんぼも 方々に散る 雨宿り

 安下宿 風鈴ひそと 生き返る

2007年08月19日

行方なき風~2

 

 はぐれたる 親を捜すか 黄金虫

 片影に 手を繋ぎし日 忘れかね

 良き事の 遍くあれよ 朝の虹

 陽を乗せて 苺にミルク 光りけり

 主なき 蛍の籠や 夕寂し