2007年10月31日
宴寂しき

「 海辺の秋 」
秋雨や 宴は淋しき ものとなり
懐かしき 海辺の秋よ 祖母の村
白波の 倦むことは無し 秋の浜
琴弾きの 松を語れる 爺逝きて
モカ挽けば 香りも秋の それとなる
友情も 老いて疎遠の 秋は暮れ
孫語る 友の白髪よ 秋夕焼け
2007年10月30日
龍淵に

「 すがる虫 」
瀬に掛かる 紅葉は山に 帰りたき
貝割れは 豆腐を寝床と 決めにけり
空高し 洋上に白き 船ひとり
身一つに 取り残されて 縋る虫
幸せや 台風一過の 白き鳥
友情の 恋情のごと 霧流れ
子は育ち 淋しきものは 龍ケ淵
2007年10月29日
台風一過

「 伝 言 」
野分過ぎ 猫も香箱 崩したり
露草に 不思議あらねど 露しとど
朝寒し 一応窓を 開けて見き
豕槌(ゐのこつち) 犬喜々として 背に負える
行秋に 言づてるもの 何も無し
気にくわぬ 五体健康 蓼の花
道標の 指し示したる 萩芒
芋畑 朝よりの雨 降り止まず
2007年10月28日
秋思醒めず

「 腹がけ 」
銭湯の 湯桶の響き 秋暮るる
冬近し スクランブルに 人溢れ
情けなき 我が身裂きたし 柘榴かな
腹がけの 若頭領や 松手入れ
島影を 引き寄せてゐる 海の月
街灯の 秋思は醒めず 夜半の雨
見上ぐれば 月ばかりなり 旅の窓
2007年10月27日
ごめ帰る

「はろーうぃん 」
高く近く 今一度来よ 海猫(ごめ)帰る
思考無く 風見る夕べ 柳散る
座るには あまりに低き 猿茸(ましらたけ)
秋蝿の 日向ひなたと 行きにけり
白秋忌 みすずも哀し 幼な唄
鶴来たる かの一日の 蘇る
初恋の 池に蒲の穂 飛散せり
ハローウィン 吾子のアルバム 繰る今宵
2007年10月26日
独りの道

「 鬼 胡 桃 」
色奪い 霧は動かず 川近し
捻くれて 取り残してある 唐辛子
家無くて 独りの道の 秋の暮れ
鬼胡桃 頑固な父の 手の如し
失いし 日々思わるる 暮秋かな
一年の 夢弔いに 菊来たる
憂き事に つい錦木の 翼折る
2007年10月25日
今年蕎麦

「 鯊紅葉 」
十割と ことしの文字の 今年蕎麦
追求の 十月号も 他所の金
朝のジャズ マイルスにせむ 空澄めば
朱き櫨 ただただ恋し 郷の家
雨上がる 波音を聞く 破れ芭蕉
主無く 案山子は骸と なりにけり
トウキビの 醤油の焦げる 隣家かな
2007年10月24日
偽りの秋

「 秋茄子 」
偽りを 問うや日向の 朱き枸杞
七輪に 秋刀魚並べて 山を見き
ひと撫での 高き雲のみ 無言なり
秋哀し 青いテントの 住人も
1番線 防虫剤の 香に押され
書店奥 紅葉特集 うず高し
モルタルの ひび割れ縫うて 蔦熟るる
山盛りの 秋茄子の紺 誘いけり
2007年10月23日
むにゅむにゅ

「 旅行ガイド 」
むにゅむにゅの 犬の腹撫で 秋の風
神田川 面影橋の 紅葉燃ゆ
顔険し 夜間工事の ガードマン
弦月や 稲門明かし 前夜祭
秋韻に 組する如し 都電車庫
色鳥の はぐれて三言 鳴き交わす
予定無き 秋旅行ガイドを マークせり
2007年10月22日
猫ひとり

「 草を噛む 」
葬列は 過ぎて行きたる 鰯し雲
草野にて 茎硬き草 噛みにけり
遠足の 子等の水筒 ちさきこと
猫ひとり ひとりの秋を 終えたるぞ
境内に 掃き残しある 一葉かな
やや温き ペットボトルも 花野なら
柿紅葉 庚申搭の 千社札
2007年10月21日
葱の朝だよ

「 自 然 薯 」
竹を切り 真直ぐに立たぬ 貯金箱
川べりに 似た人の有り 菊の宿
ほの暗き 庭に跳ばむか 染指草
草の穂は 残照を背で 送りたる
背伸びして 自然薯は山 ゐ出にけり
二番穂で さながら田植え 終えしごと
野良犬の 寄り道もせず 夜寒し
2007年10月20日
秋 袷

「 紅葉茶屋 」
月かかる 神の神杉 影深し
寒露来て 待ち人は来ず 犬走る
新藁を 寝床と決めし 三毛の猫
旅終えて 三色団子 紅葉茶屋
路地抜けて べったら市の 灯は明かし
秋の雨 嬉しき人も 泣く人も
やうやうに 探し当てたり 秋袷
アルバムを 閉じて俄かに 炉火恋し
2007年10月19日
山羊の髭

「 稲屑火 」
既にして 砂糖味醂の 根釣かな
環七を 止める程かの 日蓮忌
尉鶲 里の知り人 皆無きに
秋薊 あと二間なり 山羊の髭
稲屑火の 揺れるぞ哀し 旅半ば
いくたびか 家族の夢の 崩れ簗
鬼子母神 軒傾ぎたり 秋燈し
2007年10月18日
田仕舞い

「 ボジョレヌーボー 」
この年も 懺悔ばかりぞ 秋渇き
田仕舞いの 空にひとすじ 立つ煙り
ボジョレーを 予約して夜の 温め酒
新豆腐 醤油少なく 七味濃く
山の宿 手拈り小鉢 苦うるか
壁掛けの 一輪朱し 風炉名残
鳩笛の 杣道をまた 狭くする
2007年10月17日
どんぐり

「 弥次郎兵衛 」
悩みあり 秋の縁側 猫欠び
残る虫 鳴き切るまでの 相聞歌
石塀に 眼病みちちろは 鳴き止まず
団栗や 放り出されし 弥次郎兵衛
桐一葉 松に掛かりし 歯がゆさよ
どこまでも 未練連なる 葛の花
万物の 脚失える 霧となる
2007年10月16日
蝗のおうち

「 梨の憂い 」
太き鮭 夕餉の皿に やや焦げて
野に逃れ 秋海棠は なお閉じず
露草は 人目を避けて 藍となる
秋風の 定め無く寄せ 行きにけり
刈り取られ 蝗は住家 失いぬ
無人小屋 梨に憂いの ある如し
喉渇き 目覚めついでの 夜食かな
2007年10月15日
寂しい墓石

「 山路の月 」
竜胆を 供花となして 帰る道
松が枝を 結びて高く 登り来し
北浦の 山路の月は 痩せてをり
名も知らぬ 白き花揺る 谷の秋
石地蔵 秋思の末の 笑みと見ゆ
いくたびも 寂しき墓石を 振り返る
過ちを 是とすれば浄し 彼岸花
2007年10月14日
駒の柵

「 豆 殻 」
頼りなき 我に縋るか ゐのこづち
蔦紅葉 古き二階屋 起こしけり
秋高し 通せん坊の 駒の柵
磨かれし 林檎を買えば 歯の疼く
豆殻は 役目を終えて やや寂し
赤まんま 曳かれし犬の 小用す
流木は 吾の骸なり 秋の浜
2007年10月13日
魚走る

「 萩の雨 」
水澄みて 心細げに 魚走る
彼の日々に 戻りたけれど 雨の秋
旅の窓 萩雨止まず 母恋し
兄の手の 解けて二合の 徳利かな
泣けとごと 薄野の空 焼け落ちぬ
哀しきは 今年一人の 月の宿
吾子は二十二 置き忘れ無き 秋の暮れ
Be gentle autumn wind it my job.
2007年10月12日
秋を送る

「 鄙の村 」
石をもて 追われし里も 秋恋し
秋薔薇に 明日知れぬ身で 追肥する
雁渡る 夕暮に溶けて 声残り
先着の 旅人ならむ 鉄道草
灯台の 殊更霧を 深うする
鄙の村 秋社の供物 大笊に
旅の宿 何より馳走は 国言葉
2007年10月11日
猫と寝る

「 郷ごころ 」
松潜り 砂踏みしめて 望の潮
漏れ来たる 光りも踊る 竹の春
我もまた 一日長き 糸瓜かな
唐黍の 茹で上がるまで 猫と寝む
今日までは 雨に抱かれよ 秋新芽
街道の 並木を越えて 秋囃子
旅人の 里心つく 夜寒なり
2007年10月10日
手酌酒

「 雀 蛤 」
バター焼き 雀蛤 舌鼓
秋耕の まだ粗き土に 星の降る
古伊万里の 銚子に月光 触れ始め
一膳の 飯喰い終えて 秋深し
もう止すか 一人手酌の 猪口となり
山里に 柚子熟るる頃は 帰りたき
武蔵野の 細き枝なる 緋連雀
2007年10月09日
夜半のセレナード

「 月 うさぎ 」
家路まで 夕日と競う 秋果つる
月兎 故郷のばぁばの わらべうた
前向けば 金木犀の 香は出ずる
野菊あり 優しくされし 遠き日よ
セレナード 舞い舞いてゆけ 月を研げ
秋の海 巨人は櫂を 忘れけり
木の実落つ 褥はとうに 敷かれをり
郁子三つ 滝に逃れて 残りたる
若者の 林檎の歯形 深々と
2007年10月08日
菱の実

「 柿紅葉 」
ぐみ熟るる 帰らざる人 多くして
菱の実を もーもーと云う 若き母
庚申塔 柿の木坂の 柿紅葉
痩せ月に 寄り添いている 金の星
牧水を 待ち続けおる 秋の山
濁り酒 今日の幸い 喉仏
宛て無きに 便箋の絵は 金木犀
亡き兄の 手だけが頼りの 秋の闇
大団円 秋の夜長の ミステリー
2007年10月07日
香る季節

「 青 柚 」
稲妻に 多摩川の橋 動きたる
子鼠の 寝椅子のごとき 夜半の月
御旅所は 老いの貫禄 秋祭り
蘆刈りの 手ぬぐい遠く なりにけり
螳螂は 衣裳を変えて 下手から
そこの人 汁をかけるな 栗飯に
留守番の 一汁一菜 青柚切る
2007年10月06日
去る燕

「 虫売り 」
縦横に 紅が支えし 蕎麦の花
軒下に 二本欠伸の 唐辛子
藁塚の ようよう立ちて 握り飯
無花果の 熟れたと蟻の 伝令士
虫売の 夜店をたたむ 影絵かな
大根の 間引菜の根の 眩しさや
おーいおーい 家族も共か 去ぬ燕
2007年10月04日
鬼の子

あらら~指か何かがレンズにぃ!昔懐かしサロン調、お粗末顛末。
「 太刀魚 」
四畳半 月と親しく なりにけり
鬼の子は 下がりし樹なぞ 知らで揺れ
当て外れ 隣りを叩く 目白かな
叔父よりの 焼酎届けば たちの魚
顔知らぬ 姉の好みし みぞ萩や
かぜの侭 なんの夢とて 黄釣舟草
秋は行く 願うは無事に 死ぬること
2007年10月03日
花 会 式

「 蛇笏忌 」
旅なれば 一直線に 下り簗
万灯の 善男善女 花会式
蛇笏忌や 降りしきる雨 黒き鳥
ひそと飛ぶ 無賃乗車の 残り蚊や
秋鯖の ほどよく焼けて 箸二膳
やーいぼうず 尻叩きつつ 鯔跳ねる
背伸びして 見るものは無し 思い草
2007年10月02日
秋 凜

「 柿熟れる 」
黄昏れて 野菊に光り 残りたる
秋凜の 夕べのリスト 夜のショパン
この頃は 亡父に似たり 鮎喰らう
身の不運 歎くと云えど 柿熟るる
秋の雨 貧富の屋根を 親しうす
吊し柿 祖母の皺しわ 手の温み
2007年10月01日
ほしづくよ

「 幻 影 」
コンビニの 温き弁当 星月夜
露の玉 寄らず混じらず 身の清し
良き夢を 草に結べや 落ちる雁
兄付けし 古き傷あり 残る虫
子等去りて 竜胆爽と 立ちにけり
秋の雨 背を丸めたる 老いの犬
この年も 幻影として 秋は行く


