2008年03月31日

末世

「 スイートピー 」

青柳や 揺れて昨日を 振落とす

スイートピー 少年の日の 風が吹く

虫ひとつ 振り向きもせず 葱坊主

何はおき 豆腐喰いたき 茗荷竹

気が付けば 雀隠れの 空き地かな

花怒る 見ようともせぬ 末世かな

背伸びして 雲指し示す 花辛夷

花虻は 休みもせずに 潜り込み

夜桜に 別れし人を 重ねたり
                           
                               

2008年03月30日

愛しき者よ

「 復活祭 」

去る者は 見えねど今日の 鳥曇

いざ唄え 二尺五寸の 花見鯛

花烏賊を 小皿に取れば 笑み零れ

鮎の子の 旅は始まる 川広し

さあ君も 喧嘩を止めて 春時雨

花あれど 愛しき者の ここにある

酒楽し 脚の疲れや 深山独活

長き留守 復活祭を 待つ我等

校庭の 寂しき風よ 卒業歌
                          
                            
                                 

2008年03月29日

白として

「 春の月 」

利休忌や 壁に投げ入る 一輪花

踏青や 老いの身にこそ 滲みて来る

白として 春に生まれし 白で行く

やや不安 一年生の手は きつく

目を覚ます 雪解の水の 山葵かな

里近し 山羊の上なる 桃の花

旅列車 まさに下弦の 春の月

花影に 待ち合わせたる 月一つ

酔眼に 疲れ果てたる 朝桜
                           
                           
                              
                                    

2008年03月28日

堕天使

「 牛 蛙 」

伊予柑の 届くも未だ 枕かな

白桃は 辺りを祓い 咲くばかり

虎杖を 汁に落とせば 爽となる

その池は 狭くはないか 牛蛙

堕天使の 降りて春塵 吹き遊ぶ

蝶々の ふわりと花を 追われたる

灯を消して 突っついて見る 蛍烏賊

桑摘みや 一家総出の 太き籠

茶摘女の 襷も被りも 無きぞ惜し

日送りに 昼餉急かして 出かけたる      
                                 
                                       

2008年03月27日

桜 人

「 花の袖 」

提灯も 慢幕 ( まんまく ) も良し 花見舟

聞こし召し 花はいずれや 桜人

二の重を 取り分けてやる 花の袖

あれこれの 支度が嬉し 苗の床

茶を揉みて 納戸に香り 沈みたる

もうなのか 心残りの 河豚供養

外国(とっくに)は 桜なけれど カーニバル

人をただ 信じてみたき 春なれば

食欲の あまり湧かぬぞ 染め卵

                       
                                   

2008年03月26日

オンリーワン

「 もずく 」

五分咲きに 併せて薄く 花の雲

どことなく 人待ち顔の 夕桜

踏まれても 意地を張りたる 繁縷かな

花溢れ オンリーワンと 歌いけり

沼風に 雀の枕 さし招く

遅れては ならじと高き 紫木蓮

連翹の 押し留めたる 夕の闇

ビール冷え 水雲にお酢を ちょっと足し

春菊を 終いの鍋に 三把買い

                            
                            
                                 

2008年03月25日

雪 柳

「 子猫の夢 」

花咲きて 子猫の夢に 添い寝する

初鮒の 躍る銀鱗 身にかかり

雨あがる いい日和だと 田螺鳴く

日当たりに 雪崩るごとし 雪柳 

粒雲丹を 白きご飯の 喜べる

海棠の 井戸辺に垂れて 夕焼けかな

水神に 接骨木の花 添いてをり

郷捨てて 都忘れに 逢いにけり

春筍を 持てば家路も 苦にならず
                             
                                
                                

2008年03月24日

花来たり

「 春田打 」

春蘭の 鉢の高さや 風起こる

胡麻油 買い忘れたり 花菜雨

釣り舟を いつしか戻す 春の潮

青麦の 山を背負いて 逞しき

花来るも 見せたき人の おらずして

幸せは 無事にあること 春田打

細縞の ネクタイきつく 新教師

握り柄も パステル色の 春日傘

頬白は 隣の枝も 捨て難く            
                             
                                
                            

2008年03月23日

窓の猫

「 祭りの屋台 」

涅槃会を 居眠りをして 終えにけり

燕来て まずは古巣の 手入れかな

海柔わく 鰊曇りに 揺るる汽車

白蘭の 声高く自己を 割りて咲く

麗らかを 一筆書きの 窓の猫

ひと休み 山の菫と 握りめし

明け番の 田にも畑にも 春の塵

誘うのは 出店提灯 春祭

2008年03月22日

春雨や

 「 夕東風 」
 

嬉しいか 初の故郷ぞ 上り鮎

夕東風に 少し急ぎの 下駄の音

春雨や ハンドタオルで 事足りる

飯蛸の 良く滲みている 深き鉢

挿し木せる 斜めを僅か 直したり

香りなば 未知の旅愁や リラの花

クローバー しゃがむ子走る子 泣き出す子

栄螺焼く 土産売り屋の 親父の手

2008年03月21日

薔薇の芽

「 てまりうた 」

こでまりや 良寛和尚の 手鞠唄

各々が 菓子箱提げて 彼岸寺

粋筋の 浪花踊りの 浮かれ節

奉納も 少し多めに 御開帳

海猫渡る 海峡晴れて ビール買ふ

掠いたる 上の小川に 遠蛙(とおかわず)

塩振りて 食べたきような 薔薇芽かな

空写す 池に我あり 水芭蕉

こでまりの 黄昏れるまで 弾みたる

2008年03月20日

馬酔木

「 ひよこの産毛 」

水桶の 不足がちなる 彼岸かな

春分の 団子ちさくて 二パック

黄金眩し ひよこの産毛 色薄し

こうなごも 佃煮となる 不運かな

甍には 白木蓮の 花の影

馬無くて 馬酔木は暇を 持て余し

甦る 木苺咲けば 友の声

夕までは 精一杯の オキザリス

                   

2008年03月19日

花生まる

「夢を待つ」

雛菊は 戻らぬ夢を 待つ風情

野薊や 寄る辺無き身に 親しくて

クレソンの 岸に群れるが 清しけり

関取も やや太りたる 浪花場所

農夫には 油断大敵 霜くすべ

一杯で 済む筈も無し 星朧

郷恋し 藁に繋がる 目刺かな

言語多種 なんのものかわ 百千鳥

花生まれ 春の野山に 笑ふ声
                       
                         
                                 

2008年03月18日

罪も春に

「 吾を埋めよ 」

寄せる波 帰る潮にも 風光り

畔長く 草に負けじと 野蒜かな

杉菜には 向こうの岸が 気にかかり

里近し 特に日の射す 桃の花

梨花あれば 旅の心の 緩くして

何かしら 水を代えたき ヒヤシンス

墓前には 木苺の花 母笑ふ

糸葱を 包丁代えて 切りにける

忸怩たる 花咲く前に 吾を埋めよ               
                             
                            
                                  

2008年03月17日

風光る

「 令法茶 」

花種の 袋掲ぐの 竹を割る

令法茶を 入れて新刊 読み始め

早起きの コップを持てば 水温む

昼餉には 開け放したる 春障子

猫の背に 風も停まりし 弥生かな

掻き毟る 身の刹那さよ 光る風

ピザ買うて 荷物の増えし 春夕べ

山陰に 這いて届くも 鐘霞む

酩酊に 窓開けさせる 春の雨

                      
                                  
                                   

2008年03月16日

余分?いかがなものでしょうか

「 春意あり 」

磯蟹の 逃げるも可笑し 汐干潟

我来るを 待ち兼ねている 草蘇鉄(こごみ)かな

丹精の 髭が自慢の 翁草

木瓜の花 陽を溜めて頬 紅く染め

エリカには 忘れ難いか 去年の日々

高き塔 守りてありし 濃山吹

麗しき 姫の隠れ家 杏花村

連翹の 幹頼もしく 花安堵

脇の芽も 木偶の棒にも 春意あり   
                       
                          
                                      

             
                        
                             

2008年03月15日

白で生きる

「 花見茶屋 」

田楽の 味噌甘ければ 喉は鳴り

春闘の 出来る身こそが 羨まし

雨戸など 掃除始むる 花見茶屋

それぞれに 柔らか色の 春帽子

春の夢 続きの見たき 二度寝かな

祈らばや もしや終いの 申祭

ようように 羽根を確かむ 巣立鳥

何がなし 懐かしくある 初諸子

白と生く 不足もあれど 春や良し
                               
                               
                                  
                                      

2008年03月14日

木瓜の花 

「 潮蛇行する 」

瀬に遊び 跳ぶが嬉しき 柳鮠

蛤の 殻捨つるには 惜しき艶

蛙の子 動かぬ水に 紐を巻く

牡丹の芽 重ねし光り 報われて

その陰を 棲家と決めし 薮椿

荒布置き 潮は蛇行の 旅とせる

春田打つ 皺深き手の 好ましき

春江の 釣りの竿音 高きこと

老いの身に やがて親しき 木瓜の花        

                                
                              
               
                          
                            
                                      
                                   

2008年03月13日

春なんです

「 花雪洞 」

野に出れば その摘草に 雨かかる

晩飯の 饂飩で足りず 干鰈

懐かしき スカイラインに 牧開く

工事夫の 花雪洞を 吊したる

酢茎あり 時の移りを 噛み締める

行く鴨を しばし見送る 峠かな

夕暮れる 寺の舟石 春の猫

渓流に 季節を連れて 鱒泳ぐ                
                            
                        

         

2008年03月12日

二心無し

「ぎしぎし」

茎立ちの 哀れなるかな 鍬止まる

鉄橋の 影に溶けたる 蜆掻き

一輪に 声は発せず 匂鳥

白亜紀に 生まれ来しにか 臥竜梅

二心無し 生命愛しむ 春の雨

涅槃会を 終えて衆生の 顔優し

花粉付け 蜂は家路に 迷い無し

ぎしぎしを 夜食分だけ 頂きぬ
                             
                          
                               

2008年03月11日

厳しき父

「 祇王忌 」

村狭く 小高き丘に 蜂の箱

蝶生まれ 羽根乾くまで 息荒し

子雀の 雨樋を這う 明日は雨

祇王忌や 謡い柔らな 朝の夢

挿木して 手を洗うても 見ていたる

男だろ 春新た父の 歯は軋る

春航の 行方知らねど 手を振りぬ 

電池買ふ カメラは要らず 鷹鳩に

花種を しばし眺めて 如雨露買ひ

                        
                              
                               
                                

2008年03月10日

風ゆらゆら

「 卒業子 」

春風の 吹き来る方へ ゆるゆると

初磯の 沖には赤き 船霞む

裏庭に 老爺は無心 籾浸くる

椿餅 白磁に乗せて 茶を掬う

証書抱き 肩叩き合う 卒業子

看板の 弥生狂言 待ち遠し

日に干して 準備万端 花見茣蓙

どこまでも 腕を離さぬ 流し雛
                       
                              
                                 
                                

2008年03月09日

舞台裏

「 浜防風 」

良き朝に 水は発つべし 若狭の井

雲散りて 空それぞれに 雁帰る

川曲がる 朱く身を染む 花うぐい

やはらかに 磯巾着の 舞いにけり

海胆潜む 石白々と 乾く磯

子を捜し 畦に這い出る 夕蛙

有り難や 今宵待ち兼ぬ 芽山椒

潮騒と 浜防風と 海鳥と

一輪を 舞台の裏に 見るも良し

           
                          
                       
                     
                                

2008年03月08日

芽出る

「 鬼を探す 」

君もまた 郷が遠いか 残る鴨

薔薇の芽に 陽の滴りし 日曜日

里出でて 一人静と 逢いにけり

また明日 明日があるさと 何の芽ぞ

たちまちに 車窓楽しき 桃の花

連翹は 暗き林に 番をせり

あくまでも 鈴となりたき 馬酔木かな

異郷なり 夢にまで見し リラの道

鬼は誰 友ある如し 桑畑

揺れながら 老いの椿を 見る夕日

2008年03月07日

天の破れ

「 雀の枕 」

憎みても 余りが愛し 郷の春

誓いしに 山に残れる 桜草

尋ぬれば 離散の家や 山薊

酒提げて 雀の枕 揺るる午後

放浪の 身には鳴らぬか 鼓草

こでまりの 手招く宵に 帰る郷

風来坊 ミモザのあれば 旅を継ぐ

白魚の 透き通れるは 潔し

公魚や 天の破れを 踊り出る

2008年03月06日

養花天

「 遠足子 」

仲春や 休日長し 昼の酒

啓蟄の それのっそりと 空晴れぬ

春の月 痩せて細るも なまめかし

高く鳴く 鳥の心や 養花天

多摩川の 彼岸の犬よ 風光る

今はもう 一人の分の 田螺和え

下流より 曲がりくねりの 遠足子

後にする それも後でと 雛納

                       
                     

                    
                       

2008年03月05日

親しき異人

「 レタス 」

里山に 優しく延べよ 弥生の手

雑踏に 気持ちも弾む 春の服

苗床の 今年の土を 喰うてみる

西寄りの ひと畝だけに 芋植ゆる

誰も皆 親しく思ふ 春なれば

潮満ちて 入れ食いとなる 細魚かな

奥山に 片栗の花 忽然と

虫のごと 柳花飛びたる 夕べかな

ざくと割る レタス半分 買うて来て

                            
                           
                            

2008年03月04日

山笑ふ

「 春田の足跡 」

灰分けて 一握りほど 韮立ちぬ

厳冬の 皺を刻みて 海老根蘭

雲雀笛 山まで行きて 戻り来ず

傾きて 殿にもたるる 紙の雛

あの笑顔 二人欠けたる 伊勢参り

遠浅や 潮待ち兼ねる 潮干狩り

山笑ふ 男に縁者 薄くして

春田には  兄まだありき 足の跡

                                   

2008年03月03日

花の幕

「 鄙の道 」

鉄橋に 今また挑む 春疾風

草朧 遭う人も無き 鄙の道

山覚める 今日を良き日と 決めしごと

畦火には 行き場の無くて 鉢合わせ

磯無人 流れるままに 海女の笛

夜明け前 竿影長く 浅蜊舟

そんな目で 見るな亡者の 花の幕

棒鱈を 少しかじりて 酒の番

種蒔きや 幼きは母の 後を真似
                              
                                
                             
                              

2008年03月02日

今年の命

「 別れそして出会い 」

手を振りて 明日の花に 会いに行く

青ぬたの 味噌は柔らに 流れをり

叶うなら 郷に帰りて 野遊びを

桃の日や 幼なじみの 馬の小屋

曲水の 宴は磯を 見下ろせり

梅咲けり 今年の命 ありがたし

小綬鶏の 呼べば小道に 陽の射して

目張煮て 新たな宵の 燗の酒

引く波に やや抗える 桜貝

香を散らす 廃墟の屋根に 花辛夷

                           
                                  
                                    

2008年03月01日

土筆の墓標

「 リスト消却 」

家路には 入り陽に競う 大椿

帰りこぬ 兄待つ如し 土筆立つ

春なれば 色やや薄き 豆の花

歳時記の 春の頁に 去年(こぞ)の染み

また一つ 携帯の名は 春に消え

風塵の 踊り狂うや 副都心

人の世は 捨てたる春を 問うばかり

浮かぶ瀬も ついに無かりし 我の春