2008年04月30日

お帰り~

「 笹 粽 」

一膳の 筍飯と 貝の汁

雨止めば 腰を伸ばして 小豆蒔く

草笛が 胸のどこかに 忍び込み

崖高く 万緑迫る 川下り

早苗田に 鳴くもののあり 聞くものも

走り茶を 替わりばんこに 注ぎ合いぬ

さのぼりの 宴長々 夜更けまで

心より 家人の無事を 軒菖蒲

不揃いの 祖母の手になる 笹粽
                
                          
                               

2008年04月29日

余 情

「 惜春譜 」

朝早し 森の暗さや 惜春譜

香り立つ 里の便りの 夏蜜柑

望郷の 尾鈴の山よ 夕蛙

春余情 父の骨齧る また今日も 

一番茶 掌の幸せよ 温もりよ

一重なる 山吹の舞う 村や良し

ひげ面の 風船売は うどん食い

煩うな 生きよとばかり 春の風

ひと仕事 終えて安堵や 竹は秋
                           
                            
                               

2008年04月28日

やらかくね

「 薄 給 」

自転車に 持ち切れぬほど 春を積み

春連れて 遠洋航路の 白き船

いささかも 手抜きをせずに 菜種梅雨

この際は 留守番電話 春時雨

初恋の 君の口癖 やらかくね

薄給や 躑躅の道を とぼとぼと

藤棚に 犬の寝そべる 昼下がり

芝桜 子はすやすやと 乳母車

つまみ食い 鉢半分の 木の芽和え

                      

2008年04月27日

早く着いちゃいました

「 矢車草 」

馬の子は さくを越えたし 潜りたし

春星や 生まれし頃も そのままに

永き日を 寝ても這っても 夕遠し

幼な子の 花冠や 蓮華草

ちと早い 矢車草を 叱られず

ひと叩き 風待ち顔の 鼓草

身ひとつで 来てみたものの 遠霞

菜飯炊く 夕べの雨は 絹の糸

生きてゆけ 我を励ます 芽吹きかな
               
                               
                                 

2008年04月26日

君の名を呼ぶ

「 浜防風 」

三葉芹 ちぎれば腹の 鳴くばかり

玉ぢしゃの 水を弾くが 嬉しくて 

これはまた 春の仕上げの 八重桜

白藤と 揺れて戯る 風ひとつ

愚かにも こでまりに君の 名を呼びぬ

することを 信じてあるは 松の芯

砂山や 浜防風の 恋の頃

けふもまた 無為に過ごせる 遅日かな

野良犬が ぬっと出そうな 春の闇
                       
                           
                                        

2008年04月25日

心残り

「 祭りのひよこ 」

叫べども 夢さめやらず 春北斗

競漕の 波は遅れて 打ち寄せる

根分して 並べる鉢は 黙り込む

み仏は うつつに聞くや 壬生の鉦

迎えしは 枳殻の花 祖母は無く

母あらず 兄もおらぬに 麦青む

故郷は 糸繰草の 影絵なる

宵祭り 板戸に転ぶ ひよこかな
                     
                         
                             

2008年04月24日

暮の春

「 抱卵期 」

鳥の留守 覗いて見たき 抱卵期

雲涌きて 心の揺れる 暮の春

生ビール 喉を刺すべし 春暑く

逃げ水を 追いかけて犬 走り行く

旅心 俄かに生まる 春の潮

穏やかに 先帝祭の 凪ぎの海

巣にありて 燕しきりに 恋語る

ゴミ置き場 風温くして 蝿生る
                          
                            
                                   

2008年04月23日

酒と薔薇の日々

「 夏 隣 」

あれもこれも 春の夕べに 流すべく

半袖の シャツの眩しき 夏隣

シャボン玉 軒の辺りを 越えられず

何無くも 私に酒と 春の薔薇

大子会に 庭を巡れる 人会釈

松蝉の 似合わぬ幹に 声細く

どこまでも 付いて来たるは 梨の花

木の陰に ひそと静かに 郁子咲ける

無人寺 雨に洗われ 花しきみ
                         
                               
                          

2008年04月22日

次の世も

「 いい子だよ 」

見て行けぬ 先を急げば オキザリス

雛菊も 芯は明るく いい子だよ

洋芹を 岸辺に摘めば 日は高し

ひと時を 君と居られた 幸春や

白桃は 身の憂いなど 無き如し

石南花に 花の重さを 尋ねたき

いささかの 思いを残し 春落葉

日だまりを 我が物顔で 花苺

船縁に 競うが如く 細魚群れ
                                 
                                
                                      

2008年04月21日

春 嵐

「 伊勢参り 」

糸菜には サラダの朝と なりにけり

アスパラと ベーコン炒め 朝せわし

雨受けて 身を引き締める 花林檎

凧二つ 河原に泳ぐ 日曜日

かの人も 達者でありき 伊勢参

野遊びの 子等家路なる 里日暮れ

歯のもやし 取れぬ悔しき 春嵐

歯茎見せ 海女笑いたる 磯竈

朧夜に 会釈で過ぎる 母子かな          
                           
                             
                                  

2008年04月20日

一 行

「 ぶりだいこ 」

頂きは 雨もあがりて 茶摘時

三鬼忌に ぐつぐつと煮る ぶり大根

行く方を しかとは決めず ムツゴロウ

一行で 春と見事に 書く花よ

宿借の 宿代えとせる 昼下がり

春蚕 トラックひとつ 桑喰らひ

土筆野は 杉菜ばかりの 夕べかな

土砂降りに 身を持て余す 藤の房

落人や 十二単の 立ち姿

2008年04月19日

リラ冷え

「 鮎走る 」

リラ冷えや 明日を信じる もののあり

ほうれん草 どうしても鍋と 決めており

春の雷 近づくような 去るような

ひたすらに 上を目指して 鮎走る

鉢ひとつ 朝顔蒔きて 昼の飯

剪定の 庭師は二人 お茶を買う

かげろふを 連れて風立つ さて旅へ

馬の仔の 駆けて行けるは 高き山

見えねども 確かに捉ふ 風車
                    
                 
                        

2008年04月18日

豆の花

「 蕨干す 」

缶ビール 一本追加 春の宵

月朧 昨日の憂さも 遠きこと

干潟には 日の忘れたる 鳥多く

心なし 仏さっぱり 御身拭

ゆったりと 流れる雲や 春の果て

豆の花 身を託したる 空の下

牛虻の 牛探したる ウサギ小屋

新妻の 筵拡げて 蕨干す

河骨は 骨を曝して 昼寝かな
               
                      
                                    

2008年04月17日

うまし世に

「 田植え終わる 」

山藤の 花芽溢れる 登山道

苧環を 置きて新たな 旅とする

田植あと しんと静まる 畦野かな

磯笛は 切ないほどに 吾のもの

夜更けまで 一心不乱 花菜漬

美味し世に あるべく花と 生きること

海辺来て そこここと駆け出す 遠足子

磯遊び 弁当タイムは 松林

やんわりと 蟹も遊べる 忘れ汐               
                               
                                      

2008年04月16日

花水木

「 阿国忌 」

春月を 頼りに歩く 酔い醒まし

浜辺には 惜し気もあらず 風光る

里人に やや遠慮あり 蕨狩

梢には 安良居祭の 昼の月

阿国忌や 放浪癖の 疼きたる

あめ鱒の 淵に泳げる 静けさよ

花水木 忘れ難きの 友のあり

海棠は 何に浮かれて 揺れるやら

買うて来て さていかにせむ 鴬菜       
                           
                                   
                                    

2008年04月15日

山の恋しい石楠花

「 山椒の芽 」

糸葱は 雨に打たれて 無聊なり

接骨木の 花咲く井戸辺 郷の家

行く道に 虎杖あれば 雨も良き

山椒の芽 すり鉢にあり 夕暮れる

どこまでも 鰊曇りの 北の旅

石楠花は ただ山上が 恋しくて

春祭り 太鼓に付いて 子等の行き

竹柴の 色新しき 上り簗

深酒を 反省もせず 大朝寝        
                            
                             
                             

2008年04月14日

春  袷

「 惜春譜 」

あと少し 結末の無い 春の夢

芋植えて 雨は未だかの 我が儘さ

海遠く 鯛釣草の 試練なり

蘇坊花 君も寄るべき 枝の無く

雨近し 貸した目帰せと 鳴く蛙

惜春の 何度も幾度も 逝きにけり

この年も まだ生きていた 春の雷

団塊が 皆振り返る 春袷

2008年04月13日

一 歩

「 チューリップ 」

苧環や くるくるくるくる 何を繰る

寺の裏 大根の花 十字切る

昼の磯 海胆はじわりと 歩むなり

誘われて 路地を抜ければ 鐘供養

茶を揉みて 表に出れば 雲ひとつ

田打して 土手にお茶飲む 山高し

花びらの 半分残る 鬱金香

そしてまた 今年の芽なり 歩を進む

              
                         

2008年04月12日

祈りの春

「 韮を切る 」

風転げ 行きつ戻りつ 芝桜

懐かしき 家族の頃よ ひじき煮る

蝿の子は 何に止まるか 思案中

主無き 鴬籠の 枝に在る

挿木して 見る夕焼けの 赤きこと

雨音に 眠りそうなは 花楓

足あらば 駆け出しそうな 踊草

韮切れば 卵溶きたき 夕餉前 
                         
                            
                                  

2008年04月11日

春 芽

「 海苔を食む 」

晴れた日は ただ黙々と海苔を噛む

芝青む 小鳥と犬と 子等のある

潮曳いて 磯巾着の 行き場無し

芥子菜を 刻めばとうに 日は落ちて

春の芽は 誰に憚る 事も無し

汁椀に 画龍点睛 三葉芹

ひと鉢は お酢の効いたる 新若布

雨前に 残業ですか 夕燕

駅前は お花畑の 春雨傘

                      
                         
                             

2008年04月10日

一炊の

「 啄木忌 」

野にあれば 都忘れの 花日和

春女苑 俯くままで 日を送り

一炊の 夢より覚めて 見れば春

逞しき 蚕の夕餉 羨まし

蝶出でて することも無く 花巡る

寄居虫(ごうな)には ローン無用の マイホーム

川緩し 帰ってきたか 初諸子

雲去れば 一際高く 雲雀笛

北国の 風まだ冷やし 啄木忌           
                                    
                                  
                                   

                

2008年04月09日

紅葉の花

「 海髪食う 」

空を指す 黒き仏や  花御堂

畦塗りの 鍬高く振る 農夫かな

春航や 常の雑事を 撒いて発つ

いとおかし 紛れて行くは 紅葉花

東京も 知らずに母は 春玉子

一皿の 木の芽田楽 コップ酒

風船を 離して悶え 泣く子かな

小屋開けて 風通り抜け 羊刈る

苗床に 心拡げて 水をやり

海髪(うご)食えば 俄かに郷の 磯見えて   
                    
                                  

2008年04月08日

反 乱

「 蛤の椀 」

連翹の 光りを翳す 黄昏よ

行き暮れて いずれ向きても 草朧

蛤の 椀ひとつなる 祖母の家

山吹の 反乱のごと 押し寄せる

遠目にも 風誘うなり 竹の秋

優しきは 知らぬ他国の 豆の花

境内に 子等の忘れし 風車

花溢れ 芽吹くといえど 春かなし

躑躅には 眩しき程に 光り降る

口笛を 吹きて花影 曲がるなり
                              
                           
                                    

2008年04月07日

演歌

「 花、酒、友 」

とびきりの 花酒友の あればこそ

人絶えて 演歌の如き 花吹雪

妄想を いだけば飛花の 肩に落つ

戻りこぬ 時を惜しめる 花の宿

一人去り またひとり逝く 四月かな

白蘭の 甍を越える 訳の有る

厭世を 人に押し付け 花見猪口

春星や 追うて叶わぬ こと多く

2008年04月06日

哀愁の夜

「 花大根 」

引き潮に 右往左往の 潮まねき

山陰には 一輪草の まだ寝らず

黄昏に 道を指せるは 堅香子や 

哀愁の 夜に親しき 桃の花

晴れたれば 満天星の花 空に咲け

山吹を 揺すりて起こす 酔っ払い

かの人の 家にもありし サイネリア

あくまでも 華美を競わぬ 花大根

その身にも 愁いのあるか 山薊
               
                        
                              

2008年04月05日

叱られて

「 一年生 」

子馬には 目に入るものが 珍しく

虚子の忌や キッブは買うて みたものの

宴尽き 残るは月と 花の塵

遠く来て 迎えしものは 花杏

母の背に 見えつ隠れつ 一年生

永き日は 早めの酒を 整えぬ

叱られて 伏せて舐めたる 蓮華草

頬刺しを 焼ける匂いの いずこより

もういいかい 今年の春も 鬼のまま

                 
                              
                         

2008年04月04日

いつかの花

「 三鬼忌 」

おどおどと 友を値踏みの 入園児

公園の ゴミとなり果つ 花筵

種芋を 伏せて雨待つ ゆふべかな

童らの 体験学習 茶摘唄

鳩だけは 欠かさず参る 春社

悪人も 我に幸あれ 誕生会

生きてある いつかの花と それだけで

大川に 東踊りの 吹かれ行き

三鬼忌や ラッパが連れて 豆腐来る
 
                           
                                  

2008年04月03日

陽溜まり

「 いざなぎの桃 」

花あれば しばしとばかり 陽の溜まる

子等駆ける 波低くして 春の浜

京焼きの 茶碗と二人 炉の名残

耕牛の あればゆかしき 里田かな

陽炎も 欠伸混じりの 昼下がり

万愚節 我に似合いの 一日よ

伊邪那岐の 頼みの桃も 咲き出でぬ

春星は 緩く瞬く 家路かな

あの頃は 二人の旅の 花の宿
                            
                                 

2008年04月02日

それぞれの春

「 からたちの花 」

気にかかる 未だ手付かず 燕の巣

露店には 買い手のあらぬ 春の雛

生きるなり 春の支度は それぞれに

くちなわの ゆるりと過ぎる 蜂の箱

酒盛りの 人を見飽きて 花の散る

落日や 頷き合うて 母子草

枝曲げて こでまりの花 弾みたる

母と見き 枳殻の花 帰り来ぬ

雨しきり サンザシの花 眼を伏せず

                 
                               

2008年04月01日

義士祭

「 飛 花 」

地蔵堂 捧げてあるは 花苺

独り呑む メインはこれぞ 三月菜

故郷は ただひと椀の アオサ汁

未練とは 云わぬが長き 糸桜

風無きに 我を置き去る 飛花の昼

西行を 芭蕉の追うて 甘茶寺

新入りの 無聊をかこつ 春祭

義士祭や 香華新たに 立ち込むる

尼僧居て 老いも優しき 甘茶呑む