2008年06月30日

比類無きもの

「 昼寝村 」

冷麺の やや物足りず 中華丼

瓜漬を ぱりぱり噛めば 夕暮るる

一合が 二合となりし 冷し酒

比類無き 自負と生きるか 夏の猫

かき氷 舌を真っ赤に 笑うなよ

良く冷えし 麦茶かビールか 思案中

餡蜜豆の 汁までぐいと 飲み干して

野良犬も 顔さえ上げぬ 昼寝村

祇園会の 宵の雪洞 燈りけり

遭う人が 人買いに見ゆ 鴎外忌
            
                          
                             
                             

2008年06月29日

花虎魚

「 黒い霧が降る 」

新八つ手 赤子のような 掌を開き

夕暮れて 鳥にも帰る ところあり

新じゃがに 焼酎酌めば 飯はよか

日活の 古ポスターに 霧が降る

朝顔の 蔓ひたすらに 竹を巻く

梅雨出水 石を磨きて 渦巻ける

さすらひて 終着駅の 捩の花

良く炊けし 花の虎魚を 神前に

鉄橋を 見上げて優し 浜木綿や

旅に来て 霧笛哀しも 夜の霧

            
                    

2008年06月28日

冷や酒

「 土用あい 」

冷や酒の 一口旨き 明けの朝

捨て難き ビヤガーデンの ハワイアン

野は煙る 止む気配無き 虎が雨

雲走る 見え隠れなる 梅雨の星

夏雲の 山に架かれば 山恋し

月涼し 港へ急ぐ 小船あり

後悔を してはなるまじ 大西日

鄙宿に 馳走なけれど 土用あい

いかづちは 天地を裂きて 得心す

バーボンの 氷弾ける 夕立風

         
     

2008年06月27日

冷 奴

「 すててこ 」

すててこで 男子を誇る 世捨て人

冷奴 あまりに寂し 虹を見き

山霧は あくまで明日を 閉ざしたる

雲海の 山は眠りを いでずして

梅雨川や 岸辺を高く 削りをり

青梅が 色付くほどに 郷恋し

蛍狩り 橋を越えれば 母の里

貸しボート 揺れて思わず 手を握り

紐の色 褪せて久しき 登山靴

幽霊も 住み難くなる ばかりなり

想い出は 見世物小屋の 走馬灯

 

 

2008年06月26日

くちなしの花

「 キャンプ・ファィヤー 」

空色を 映せばいいに 夏椿

当たらぬぞ 棒振り回す 西瓜割

遠き日の キャンプ・ファィヤー 新世界

あの世には 入道雲の 立ちし日に

ビールには あーと云うべき 訳がある

梔子や もはや戻れぬ 郷の家

徘徊の 年寄りに降る 夏銀河

夜更けには 静かに開く 水中花

手花火の 家族ありけり 遠き日や

               
                             

2008年06月25日

金魚花

「 竹婦人 」

麦飯を 炊きたくなれる 日のありき

蚤取粉 ぱふぱふ撒きし 四畳半

草笛を 帰らぬ日々に 吹く夕べ

雨休み 畑の事が 気にかかる

雲湧けば しばし泳げる 金魚花

日覆の 波打ちてをり 香の店

竹婦人 目覚めて見れば 足蹴なる

あの頃は タイヤチューブの 浮輪かな

起し絵の おどろおどろと 踊りたる

            
                

2008年06月24日

惰 眠

「 桃葉湯 」

三蔵の 夢は成ったか 桃葉湯

世も更けて 梅酒とろりと 対流す

白玉や 一期一会の 喜びを

踊場に 天蛾(すずめが)ひとつ 終わりけり

日当たりに 寄り添うている 夏蕨

ひね胡瓜 貰って嬉し 帰り道

保育園 苗代グミの たわわなり

孫太郎 未だ惰眠を 抜けきれず
 
 
       

   
                        

2008年06月23日

寂しい人形

「 天瓜粉 」

黄の帯を 締めて清しき 藍浴衣

意を決し 麦藁帽子の 紐を絞め

取り敢えず 木綿豆腐に 生り節

大川に 柳川鍋の 暑気払い

子は巣立ち 寂しい人形 残される

飯炊けて 待ち兼ねている 茗荷汁

こめかみを 押さえながらの かき氷

胸にある 母の叩きし 天瓜粉

行水を 終えて天指す ゴム草履

    
                   

2008年06月22日

夢は何色

「 十 一 」

豆見れば げんなりとする 夏断かな

朝顔の 蔓の行方に 迷いけり

鹿の子は 座ったままで 母を追う

十一の  鳴く方見れば 昼の月

気ぜわしく 誰を尋ぬる 水鶏かな

五位鷺は やうやう帰る 決心し

堤防に 少年達は 小鯵釣り

海桐咲く 耳傾ける 海の声

外堀に 時を知らせる 未草

ちさき実に 手合わせて喰える 絹莢や

               
                                    

2008年06月21日

みんな仲良し

「 蛍 見 」

麓まで 遥かに渡る 青田波

蛍見の 帰り車の 灯り揺れ

子のはしゃぐ 声も聞こゆる 夏灯し

風鈴は 夕べの音に 変わりたる

せっかくの 夏の朝だよ 手を繋ご

井戸替の 釣瓶は軽く なりしかな

ぱったりと 途絶えし人の 夏見舞

出番無く 寂しく見ゆる 登山帽

想い出に 朱く染まれる 夜店かな

                 
                                

2008年06月20日

残照

「 夏の菊 」

猫の目を 捉え離さぬ 金魚玉

魚蛙 何処へ行ったか 浮人形

何よりも 馳走なるかな 納涼床(すずみゆか)

白服の 眩しき日には 遠出せむ

日の暮れに ゆかしきものは 夏羽織

もやい解き 期待高まる 船生け簀

山路には 闇に泳げる 烏瓜

山門を 静かに潜る 夏の菊

垣根には 忘れもせずに 留紅草
 
        
              
                     

2008年06月19日

万緑

「 花南瓜 」

河原には 子のはしゃぎをり バーベキュー

麻暖簾 風と一緒に 潜るなり

枇杷熟れて 優しき心地 取り戻す

陽のあれば 酒まだ早し メロン切る

万緑に 人は生命を 重ぬれど

笹の子は 親の真似して 天を指し

日は落ちぬ 土乾きたる 花南瓜

パンダなら バリバリ噛まむ 今年竹

気が付けば 潮満ちてをり 穴子釣

             
                       

2008年06月18日

元気で行きまっしょい

「 夕端居 」

朝の吾子 シャボン香れる 洗い髪

へぼ将棋 岡目八目 夕端居

腹ごなし バケツ抱えて 水を打つ

蝉生る みんな元気で 行きまっしょい

裸足には 小砂利煩き 波を蹴る

背の伸びし 娘はごろり 三尺寝

漁火の 郷の港よ 闇深し

肝試し 友がきの顔 まざまざと

夜祭の 金魚掬いの 赤き灯よ
        
                

2008年06月17日

夏の紅葉

「 てぐす虫 」

噛みおれば やがて月あり 鯣烏賊

郷の杜 忘れられない てぐす虫

庭石菖 その紫の 健気なる

捩花や 過ぎにし日々を 振り返る

少年の 現の証拠は 未だ腹に

父の日の 穏やかならず 夏紅葉

雨止まず 借りてささむか 破れ傘

桑の実の 夕日の味も 懐かしき

夏萩は 飲りすぎたるか 頬を染め
  
           
              

2008年06月16日

カタリカタリ

「 獅子唐 」

浜木綿の 雨は静かに 降り続く

朝見れば 真から優し 韮の花

獅子唐を 噛めば一合 追加せり

波無くに 哀しからずや 根無草

パバロッティ カタリカタリと 神の声

暑かろと 自ら離る 竹の皮

うどんげの 白く眩しく あるばかり

旅の宿 泣きたい程に 百合香る

渡るべき 川見当たらず 花擬宝珠
               
                          

2008年06月15日

取敢えずの夏

「 らっきょう 」

かたばみの 花在ればこそ 歩みけり

車前草を ひとり千切れる 陽は沈む

辣韮の 里の泥まで 売られたる

取敢えず 浴衣は金魚と 決めてをり 

大味な 煮物なるかな 夏大根

山陰(やまげ)には 山仰ぎ見る 山ゴボウ

村の駅 夕日の梯子 立葵

まだ細く 風にも揺れぬ 青瓢(あおふくべ)

夕顔よ ゆるりと休め 徹夜明け
                 
                     
                    

2008年06月14日

やがて来る者

「 ニッキ水 」

いずこより 舞ひ来たるかや 揚羽蝶

高き日に 尺取り虫の 道遠し

鎧をば 脱ぎたくないか カブトムシ

川祭り 河童も舟を 揺らしけむ

ビールより 水羊羹の 冷えたれば

夏の夜に やがて来る者 誰も云わず

子等の舌 色とりどりの ニッキ水

茶店には 新調されし 氷旗

斑猫の 尋ねもせぬに 道教え

        
                

2008年06月13日

許されて生きる

「 メダカの学校 」

ががんぼの 足を見ながら 夜は更ける

緑なる 草蜉蝣は 網戸這う

青シダは 森の暗さに 俯かず

蕗の葉は 銀雨のテグスで 釣られけり

いささかも 悔い無き如し 合歓の花

海の声 既に届かぬ 海星あり

傘雨忌に 許されて生きる 心地かな

川座敷 今年も生きて 鱧を喰う

先生を 見失うなよ めだかの子

       
                            

2008年06月12日

軒 忍

「 走馬灯 」

子蟷螂 いつまでも切れぬ 鎌を振る 

梅雨月夜 あくまで細く ありにけり

主無き 宿にしつらふ 軒忍

五月晴れ はたとし残し 事のあり

走馬灯 人は哀しき ものなるぞ

老いたれば 高く輝く 庭花火

麻服の 人を見かえる 夜弁当

アッパッパー ああそのかみの 母と見き

何がなし 左折とせむか 単帯

               
                        

2008年06月11日

路傍の花

「 氷 器 」

御旅所の お神酒に朱き 面揃い

もう飛ばぬ 潮騒哀し つばめ魚

短夜や なかなか取れぬ 酒の息

椎の花 甘く薫りし 郷の家

この花も 知らねど夏の 君なりき

磯蟹の 鋏振り振り せわしかり

牛去りて そろりとばかり 蚯蚓出づ

雨止まず する事も無し 夏蛙

桜桃を 氷うつわに 移し代え

蛍火の 夕べ哀しも 細き月

            
                          

2008年06月10日

とうもろこし

「 蝙 蝠 」

鮎一尾 川音遠く 横たわる

青萱の 強き意志にて 立ちにけり

深き森 一筋降りる 蜘蛛の糸

声高く 闇切りにけり 蚊喰鳥

残鶯は 谷を渡らず 去りて行き

叢の 蜥蜴は猫に 凍りつき

歩くさえ 間の抜けて見ゆ 羽抜鳥

とうきびの 歯型で分かる 喰うた人

昼からは 雨となりにき 桜桃忌
            
                           

2008年06月09日

私の彼は左巻き

「 馬 陸 」

来た道を 何故に戻るか 天道虫

初蝉の 陽射しに追われ 木を昇る

糠蚊には 今日が限りの 晴れ間かな

薮暗し 網を繕う 女郎蜘蛛

丸まりて 馬陸は己を 解(ほどか)ざる

頂きの 芭蕉巻葉は 雲恋し

喧嘩して くるくるぱぁの 夏の草

夏草を 毟りて風に 預けたり

家在りし あの頃のごと 茅花噛む

            
                       

2008年06月08日

棕櫚咲く

「 白ギス 」

這う虫を じっと見ている 茄子の花

棕櫚咲くを 雨宿りして 見上げたり

睡蓮の 開かむとする 風止まる

布袋草 ゆらゆら夢を 結びけり

これはまぁ 猫太りたる 金魚鉢

白鱚の 静かに揚がる 竿の先

今少し 酢の足りぬよな 穴子鮨

それ以上 高く飛べぬか 梅雨の蝶

                
                            

2008年06月07日

鳴 神

「 黒南風 」

梅雨寒や 温き燗など 整えむ

夏の夜は 枕の脇に ミステリー

黒南風に 追われし如き 家路かな

廃屋に 家人を尋ぬ 梅の雨

夏雲は 郷の道にも 出でしかな

鳴神の 去れば喧騒 帰り来る

山霧に 音みな絶えし 下山道

霧笛あり さらに哀しき 旅心
 
                  
                       

2008年06月06日

蝸  牛

探しても蝸牛は例によって居りませんので悪しからず。

           

「 梅雨の狸 」

若苗の 首まで浸かる 水田かな

ガス灯の 夜魚を追う 出水なり

蝸牛 家をかろうて お引越し

松が枝に 右弦の暗き 月涼し

故郷や 家はあらねど 夏の雲

団欒の 窓の明かりや 夜半の夏

荒れ寺に 狸は梅雨と 暮らしけり

お茶にせし 茶碗に未練 酒を注ぐ
          
                     
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いつも私が話す尾鈴の山をヒコさんがアップしてくださいました、
是非ご覧あれ。http://t150106k170928.shashin-haiku.jp/

                             

2008年06月05日

草 矢

「 井戸浚え 」

雨止まず 田に迷い込む 濁り鮒

旅に来て 噴井のあれば ひと心地

豆の飯 食べ過ぎて酒 旨からず

投げ出しの 本を捜すや 梅雨篭り

草矢飛べ 郷の夕日に まっしぐら

青簾 看板娘は 大欠伸

わんさかと 浄水場にも 夏の風

絵扇の 紫式部 暑からむ

ギヤマンの ひときわ涼し コップ酒

井戸さらえ 終えて煙草の 汚れ面

                          
                                   

2008年06月04日

路地裏の少年

「 蝿取紙 」

行くまいか 決めかねている 半夏雨

大いなる 意志のあるごと 夕の虹

稜線に 停まりしままの 夕焼雲

裾捲り 少年達が 夏の河

納屋の隅 今は廻らぬ 糸車

ああ胸に 消え残りたる 麦こがし

吊したる 蝿取紙に 顔捕られ

少年の 路地裏にある 夏の夕

浸かるまで 今年も持たぬ 梅漬くる
            
              

2008年06月03日

栗香る

「 刈り干し切り唄 」

刈干の 唄が流れる 山の暮れ

子等走る 里に蛍が 眠るまで

吾子眠る 寝茣蓙の跡を 頬に付け

嬉しきは 出迎えくれし 花氷

簗番の 煙草の明かり 明滅す

栗の花 誰にこの香を あげよとて

箱眼鏡 自分の足に 驚きぬ

古けれど 捨てかねている 登山帽

干瓢や 胡瓜を選りぬ 握鮓

             
                   

2008年06月02日

百合の朝

「 おこぜ 」

海月には 海の深さを 計りかね

尺取を 来た方にまた 向け直し

恐き面 悪人は無し 寅魚煮る

大口の もはや開かぬ 鯰かな

二日酔い 金魚の鉢に 入りたき

ごめんねが 云えぬままにて 百合の朝

かなぶんの 仕舞い忘れし 柔き羽

昼顔は 波に併せて 揺れてあり

凪の海 見下ろす土手の 風知草
   
                    
                               

2008年06月01日

とまと

 


 

「 夏燈し 」

花独活は 住まいを代えて 酒瓶に

夕菅の 香の強くなる 夜更けには

さくさくと 音たてて喰う 青林檎

辣韮を 浸け終えたれば 酒にせむ

疑わず 信じて見たき 夏燈し

夕暮れに 何を背負うか 茗荷の子

甘夏を 切れば故郷は ここにあり

良く冷えし トマトが先の 夕餉かな

新じゃがに バター自ずと 溶けて浸み